mPOSは元々、決済代行会社大手のベリトランスの一つの事業として始まりましたが、2017年10月に親会社のデジタルガレージがANAと合弁会社を作って、現在mPOSの運営会社は「ANA Digital Gate株式会社」になります。
全国にはまだクレジットカード決済を導入していない店舗が多数あり、そこに「ANA」という強いブランド力を使って営業していくという戦略という新会社の意図があります。
スマホ決済としてのmPOSの特徴は2つです。1つは大企業向けに管理画面やデータ連携などのカスタマイズができること。2つ目は訪日中国人向けの「アリペイ(支付宝)」や「銀聯カード」が使えることです。
それでは決済代行会社で15年の経験のある筆者がmPOSについて詳しく解説してまいります。
mPOSの由来は?
mPOSは元々、ベリトランスの一事業でした。当時のmPOSの売りは「カスタマイズ」できることです。カスタマイズとは「管理画面のカスタマイズ」だったり、「基幹システムとの連携」などの大企業向けのカスタマイズのこととです。
スマホ決済のメインターゲットの小規模事業者向けには「スクエア」や「コイニー」等がすでに市場を先行していたため、そこで同じビジネスモデルでは、厳しいために「mPOS」はあえて大手企業向けの「カスタマイズ」を売りにしていたのです。しかし、結局シェアを大きく獲得することはできませんでした。
そこで、ANAと合弁会社を作れば「ANA」という誰でも知っている看板を使うことができるため、新会社「ANA Digital Gate株式会社」では、地方のクレジットカード決済を導入していない店舗に、積極的に営業をかけているのです。ANAの関連会社であれば、個人事業者も話を聞いてくれますからANAのブランド力は競合他社に比べて大きなメリットがあります。
mPOSの特徴は?
mPOSの特徴は2つです。
◆mPOSの2つの特徴
①カスタマイズ可能
②中国人向けの決済に強い「アリペイ」「銀嶺カード」
①カスタマイズができる
カスタマイズは、裏側でベリトランスが対応しており、個社事にデータ連携や管理画面のカスタマイズなどに対応してくれるでしょう。ただしカスタマイズは大手企業向けであり、費用もそれなりにかかりますから、個人店舗向けではありません。
また、mPOSは「食べログ」や「NTT」にOEMの形で提供しており、ユーザーからみると「食べログpay」なのですが、裏側はmPOSであり、事業者のアプリケーションに組み込んだ独自ブランドでの決済サービスを提供しております。これもカスタマイズ可能な「mPOS」の一つの形です。
②中国人向けの決済に強い!
アリペイや、銀嶺カードに対応しており、訪日中国人向けの決済サービスが充実しています。昨今は日本の地方に多くの中国人が訪れておりますから、そういった店舗事業者が「通常のクレジットカード決済」と「アリペイ(支付宝)、銀嶺カード」が使えるのは大きなメリットとなります。
中国ではクレジットカード決済はほとんど使用されておらず、アリペイ(支付宝)のQRコード決済が主流です。店舗にアリペイのシールを貼っておけば、中国人が安心してお店で買い物ができます。
mPOSの費用や手数料は?
下記表はスマホ決済の大手7社で比べたものです。
mPOSは他社と大差がありませんが、導入の際、端末代が15000円かかってしまうことがネックです。こういったところが、もともと大手企業向けに提供していたmPOSの名残かもしれません。また入金タイミングも競合他社と比べて、遅いのがデメリットになるでしょう。
こういったデメリットと、mPOSの最大の強みの「アリペイ(支付宝)・銀嶺カード」対応などを自社ビジネスで天秤にかけて、導入を検討することになるでしょう。
mPOSの社内雰囲気は?
あまり詳しくはわかりませんが、出資比率はANAが51%でデジタルガレージが49%で、各々の社員が出向しており、労務管理系が、ANA出身の社員が担当しておるようです。
mPOSのサポート体制は?
mPOSだけでなく、スマホ決済各社は薄く広いビジネスモデルであるため、サポート体制を大規模にしている会社はなく、mPOSも同様だと推測しています。この点はどのスマホ決済各社も変わりがありません。
mPOSのシステムは?
ICカード対応が終わっており、暗証番号入力も可能で、セキュリティーに問題はありません。そしてカスタマイズ等が発生した場合は、ベリトランスが裏側で対応しています。
mPOSのパートナー戦略は?
もともとベリトランスの一事業だった時は、パートナーがいなかったためmPOSもあまり普及しませんでしたが、現在はANAと提携し、そのブランド力を活かして地方に積極的に営業をかけて行くでしょう。
mPOSが向いている事業者は?
まず訪日中国人がお客としてくる店舗には「アリペイ(支付宝)」が使えるためおススメです。まだクレジットカード決済を導入していない地方の店舗には、クレジットカード決済もアリペイも使えるmPOSは魅力的です。
もう一つが、大手企業で、自分達のビジネスとシステム連携してスマホ決済を導入したい会社は、カスタマイズができるmPOSが選択肢としては有力になるでしょう。
mPOSのライバル企業は?
スマホ決済各社がライバルになりますが、特に訪日中国人向けにWeChatPayに対応している「コイニー」が、一番のライバルとなるでしょう。なぜならコイニーとmPOSは得意分野がスマホ決済各社の中で似ており、導入の際は入金タイミングや導入期間なども考えてどちらかを導入することになるでしょう。
mPOSのまとめ
mPOSは差別化が難しい、スマホ決済各社の中では特色が強い会社であると言えます。それは元々大手企業向けにカスタマイズを武器に展開をしていたのが由来であり、「スクエア」や「コイニー」と大きな違いです。
しかし、ANA Digital Gate株式会社となってまだ日が浅く、今後はサービスも改善されて、より利便性の高いものになるのではないのでしょうか?今後はANAの看板を使って、スマホ決済競合各社としのぎを削っていくことでしょう。
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